ぶどう膜とは、眼球の中の血液が通う部分のことで、 その部分が炎症を起こした時に、ぶどう膜炎と言われる。 その原因は、多岐にわたり、専門医でも原因がわからない時もある。 今回は、虹彩と毛様体に起こる「前部のぶどう膜炎」を紹介いたします。
前部ぶどう膜炎
眼球内の血管が入り込んでいる組織の炎症のこと。
原因が多すぎて、専門医でもその特定に至らないことも多い病態です。
目で見える範囲の「前部」と、目の後ろの部分の網膜などに起こる「後部」があります。
今回はそのうち、瞳孔を開いたり閉じたりするのに関係がある、「虹彩」と「毛様体」部分に起こる「前部ぶどう膜炎」について紹介します。
目がなんとなく濁っているのがわかりますか?
一般的には、
それ以外には、犬アデノウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルス、ブルセラカニスに代表される「感染性」や、 ミニチュアシュナウザー、トイプードルで見られる「脂質性(高トリグリセリド血症)」、 リンパ腫や、子宮蓄膿症などによる2次的なぶどう膜炎もある。
症状で最も一般的なのが、『目の濁り(曇り)』と『目の痛み』
時には、瞳孔が小さくなっている「縮瞳」と言われる状態も見られます。
文字で説明するのは難しいので、実際に症例を見て行きましょう(^^♪
結膜がたるんでいるのと(浮腫)、黒目の下、5時の方向に赤くなっている部分が見られます。
しかし、この画像だけでは、角膜が濁っているのか、目の内部が濁っているのかがはっきりとはわからない。
赤矢印・・・赤くなっている部分 黄矢印・・・結膜のたるみ(浮腫)部分
反対側の目です。
角膜の濁りは、結膜炎からの問題であると考えればいいのか?!
その答えは、次のスリット(細隙灯)検査ではっきりします!
緑矢印・・・目やにの部分
黄矢印・・・結膜のたるみ(浮腫)部分
スリット(細隙灯)検査の写真です。
スリット(細隙灯)を入れると、この様に、角膜と、虹彩の間にモヤモヤがあるのが確認できました!
このモヤモヤは目の内部の炎症を示していまして、このことから、前部ぶどう膜炎と診断出来ました。
白矢印・・・目やにの部分
青矢印・・・スリットのラインの部分
細い光で輪切りしている状態
今回はぶどう膜炎の原因は確定できませんでしたので、ぶどう膜炎に対しての対症療法として
<点眼治療>
<内服薬>
を実施してもらい、8日後に再診としました。
以上の事から、ぶどう膜炎の治療は成功しているものの、まだ完全に炎症が終わっているわけではないので、今後も引き続き継続治療しながら、ステロイドを少しづつ下げて行った時の反応を見て行く必要があります。 あと、少なくとも2週間はかかると考えています。
この写真で、白目の充血と、黒目がモヤモヤしているのがわかるかと思います。
実はこの子、『水晶体起因性ぶどう膜炎』だったのです!
白内障の状態で、放置してしまっていると、突然にこうなることがあります!
この様な状態の時は基本的に目が痛くて、来院時には同時に緑内障になってしまっている子も・・・。
当院では白内障の子は、手術をしない場合でも定期的に来院をしてもらい、処方している点眼薬の効果や
かすかなぶどう膜炎の兆候がないかどうかをモニタリングしています。
一度こうなってしまうと手術を受けていただくしかないので、とても大切なモニタリングと考えております。
水晶体起因性ぶどう膜炎のワンちゃん とても痛がっておりました・・・(泣)
この病気は、特発性のほかに、眼の病気の続発による場合、感染症・免疫介在性疾患・脂質代謝異常などの全身性疾患が原因となっている場合もあり、
原因の特定のためには血液検査が必須ですが、それでも原因がはっきりとしないことも多い病気です。
そして、この病気は再発することも多く、その後の経過をきちんと記録することも重要になります。
「突然、目が赤い」 「目が痛そう」 「ショボショボしている」 「寝ている時間が多くなった」
などの症状があった場合は、たしかに命にはかかわることは少ないですが、なるべく速やかに受診されてください。
また、白内障からのぶどう膜炎も多く、白内障の放置は上の写真のように、基本的に危険です。
特に高齢のワンちゃん、また、M,ダックス、トイプードルなどで多い、進行性網膜萎縮症のワンちゃんは特に定期的な眼科検診をお勧めいたします。
なかなか説明が難しい病気ですので、このページでご理解が難しいかも知れませんので、ご不明な点は、診察時にお気軽にお聞きください。